交通事故に遭われたあと、幸いにも痛みがなく「大丈夫」と自己判断していませんか?

実は、むち打ち症(頸椎捻挫)は遅れて症状が出ることがほとんどです。

交通事故で最も多い外傷の一つが「むち打ち症(頸椎捻挫)」です。

事故直後は症状を感じなくても、翌日以降に首の痛みや頭痛、めまいなどの不調が現れることがよくあります。

当院は警察署の隣のビルであり、交通事故後の治療でお越しになる方が少なくありません。

そのようなお悩み不安をよくご相談されます。

今回は交通事故によるむち打ち症において、以下解説していきます。

  • なぜ症状が後から現れるか
  • どのタイミングで受診すべきか
  • 治療開始後の目安期間

早期の適切な治療が後遺症の予防につながるため、むち打ち症について正しく理解することが重要です。

一緒に確認していきましょう。

むち打ち症(頸椎捻挫)とは

首の不調(むち打ち)に悩むビジネスウーマン

まずは「むち打ち症って何?」という基本的な疑問から解決していきましょう。

意外と知らないことが多いかもしれません。

むち打ち症は、交通事故の衝撃により頭部が急激に前後に振られることで起こる首の外傷です。

この動きがムチのようであることから「むち打ち症」と呼ばれています。

事故の時、首に何が起こっているの?

自動車による交通事故を例にしますと、以下むち打ちが起こる仕組みです。

  • 追突時:頭部が後ろに反り返った後、前方に振られる
  • 正面衝突時:頭部が前方に振られた後、後ろに反り返る
  • 側面衝突時:頭部が左右に振られる

医学的分類(ケベック分類)

国際的に使用されている分類方法で、重症度により0度から4度に分けられます。

Grade 0 症状なし、身体所見なし
Grade 1: 首の痛みのみ、身体所見なし
Grade 2: 首の痛み + 筋肉の緊張・圧痛
Grade 3: 首の痛み + 神経症状(しびれ、筋力低下など)
Grade 4: 首の痛み + 骨折・脱臼

次に具体的なむち打ちの症状をみています。

むち打ち症の症状

「私の症状もむち打ちなのかな?」と心配になっていませんか?

むち打ち症の症状は、実は思っているよりもバリエーションが豊富なんです。

あなたが感じている不調も、実は交通事故と関係があるかもしれません。

初期症状(事故直後~72時間)

事故直後はアドレナリンの分泌により痛みを感じにくいことがあります。

主な初期症状

  • 首の痛み・こわばり
  • 首の可動域制限
  • 肩こり・肩の痛み
  • 後頭部の重だるさ

遅発性症状(数日後~数週間後)

時間が経過してから現れる症状も多くあります。

身体症状

  • めまい
  • ふらつき
  • 吐き気・嘔吐
  • 耳鳴り
  • 視力障害・かすみ目
  • 手足のしびれ
  • 腰痛

精神・神経症状

  • 集中力の低下
  • 記憶障害
  • 不安感・抑うつ
  • 不眠
  • 易疲労感

見落としやすい症状

以下のような症状も交通事故との関連性がある場合があります。

  • 顎関節の痛み・開口障害
  • 飲み込みにくさ
  • 声のかすれ
  • 背中の痛み
  • 腕のだるさ・握力低下

むち打ち症の診断

「病院に行ったけど、レントゲンでは異常なしって言われた…でも痛いんです」そんなご相談をよく受けます。

実は、むち打ち症の診断にはいくつかのポイントがあるんです。

しっかりと検査を受けることで、適切な治療につながります。

画像検査

検査詳細
レントゲン検査骨折・脱臼の有無を確認
頸椎カーブの異常をチェック
椎間関節の状態を評価
MRI検査椎間板・神経・筋肉の損傷を詳細に評価
レントゲンでは見えない軟部組織の異常を発見
CT検査複雑な骨折の詳細な評価
必要に応じて実施

理学検査

検査詳細
可動域検査前屈・後屈・左右側屈・回旋の測定
痛みの誘発点の確認
神経学的検査反射検査
筋力検査
感覚検査
上肢牽引テスト
エコー検査リアルタイムでの筋肉・腱の状態確認
炎症の程度を視覚的に評価

治療期間の目安

むち打ち症の治療期間について、できるだけ具体的にお話しします。

もちろん個人差はありますが、目安があると安心ですよね。

症状別治療期間

むち打ち症の治療期間は症状の重症度や個人差により大きく異なります。

症状Grade症状別治療期間
軽症(Grade 1)2週間~1ヶ月
中等症(Grade 2) 1~3ヶ月
重症(Grade 3-4)3~6ヶ月以上

治療期間に影響する要因

  • 事故の規模・衝撃の強さ
  • 年齢(高齢者ほど回復に時間がかかる)
  • 既往歴(過去の首の外傷など)
  • 職業(デスクワークなど首に負担がかかる職業)
  • 治療開始時期の早さ
  • 患者さんの治療に対する積極性

当院の治療アプローチ

「どんな治療をするんだろう?」

「痛いことされるのかな?」

そんな不安もあると思います。

大黒整骨院では、あなたの症状に合わせて段階的に治療を進めていきます。

安心して治療を受けていただけるよう、詳しくご説明しますね。

当院での初診から治療の流れをご案内します。

柔道整復師の大黒院長が骨格脊椎模型を使って患者に身体の構造や症状についての説明している施術室での説明風景

その

第1段階:急性期

事故直後〜約2週間

〜まずは炎症を鎮め、神経を守る

「絶対安静」の時期〜

この時期の患者様の状態

  • 首、肩、背中に熱っぽさがあり、ズキズキと脈打つように痛む。
  • 少し動かすだけで激痛が走り、寝返りを打つのもつらい。
  • 頭痛、吐き気、めまい、耳鳴りなどを伴うこともある。
  • 事故のショックによる精神的な興奮や不安が非常に強い。

この時期の治療目的

この時期の最優先事項は、「守り」に徹すること。損傷した組織の炎症を悪化させず、過敏になった神経を鎮静化させることに全力を注ぎます。
二次的な損傷を防ぎ、次の「回復期」へスムーズに移行するための、最も重要な土台作りの期間です。

  • 原則、マッサージは行いません
    この時期に患部を強く揉んだり押したりすることは、火に油を注ぐようなものです。当院では炎症を悪化させるリスクのある施術は一切行いません。
  • だいこく式神経整体(急性期バージョン)
    まるで触れているだけのような、非常にソフトなタッチで、痛みの大元である「神経の伝達異常」にアプローチ
    します。身体が過剰に興奮している状態を解き、ご自身が本来持っている自然治癒力が最大限に働く環境を整えます。
  • アイシングの徹底指導
    ご自宅でできる最も効果的で安全な応急処置がアイシング
    です。しかし、やり方を間違えると効果は半減してしまいます。当院では、最も効果的なアイシングの正しい方法、時間、頻度を丁寧に指導します。

安静の確保:必要であればコルセットなどで首を固定し、できる限り安静に過ごすことが、この時期最高の治療法です。

温めるのは厳禁です:湯船に浸かるのは避け、入浴はシャワー程度にしてください。患部を温めると炎症が強くなります。

無理なストレッチはしない:良かれと思って首を回したり、強く伸ばしたりするのは絶対にやめてください。悪化の原因になります。

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第2段階:回復期

約2週間後〜1ヶ月半

~痛みの原因へ本格アプローチを開始する

「根本改善」の始まり~

この時期の患者様の状態

  • ズキズキとした激しい痛みは和らいだが、鈍い痛みや重だるさがしつこく残る。
  • 上を向く、振り向くなど、特定の動きで首や肩に痛みが走る。
  • 天候やその日の疲れによって、症状が良くなったり悪くなったりを繰り返す。
  • 「このまま本当に治るのだろうか」という焦りや不安を感じ始める時期。

この時期の治療目的

ここからはいよいよ「攻め」の治療が始まります。痛みの根本原因となっている「身体の歪み」を特定し、正常な状態へと導いていきます。神経の圧迫を取り除き、筋肉の柔軟性と血流を回復させることが目的です。

  • だいこく式神経整体(本格始動)
    ここからが「だいこく式神経整体」の本領発揮です。
    事故の衝撃で歪んでしまった頚椎(首の骨)や関節の位置を、ミリ単位の精度で特定。ボキボキと音を鳴らすような危険な施術ではなく、身体に負担のない優しい刺激で、神経の通り道を確保する的確な矯正を行います。
  • 深層筋(インナーマッスル)へのアプローチ
    痛みの原因は、表面の筋肉だけではありません。
    レントゲンにも映らない、骨の周りにこびりついた深層筋の硬直こそが、しつこい痛みの正体です。当院では、この深層筋に的確にアプローチし、本来のしなやかな機能を取り戻していきます。
  • 段階的な運動の開始:専門家の管理のもと、安全な範囲でのストレッチや運動を少しずつ開始します。自己判断での無理な運動は禁物です。
  • 正しい姿勢の意識:日常生活での「姿勢」が、回復スピードを大きく左右します。デスクワーク中の座り方や、スマホを見るときの角度など、具体的な指導を行います。

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第3段階:慢性期

1ヶ月半〜3ヶ月(~)

~後遺症を残さないための

「自律神経」へのアプローチ~

この時期の患者様の状態

  • 大きな痛みはなくなったが、首や肩のこり、頭痛、疲労感がどうしても抜けない。
  • めまい、不眠、集中力の低下、気分の落ち込みなど、原因不明の不調(自律神経症状)が出やすい。
  • 治療期間が長引くことで、「もう治らないのでは」と諦めの気持ちが出てくることも。

この時期の治療目的

むち打ち治療の最終関門。それは「自律神経の乱れ」との闘いです。

事故の衝撃は、身体だけでなく、心と身体のバランスを司る自律神経にも大きなダメージを与えます。

この問題を解決しない限り、本当の意味での回復はありません。

後遺症のリスクをゼロにし、事故前よりも健康な状態を目指します。

  • だいこく式神経整体(自律神経調整)
    頭蓋骨や骨盤の微細な歪みを調整することで、脳と身体を繋ぐ神経の流れを正常化します。
    特に、脳脊髄液の循環を促進させることで、興奮した交感神経を鎮め、心身ともに深くリラックスできる状態(副交感神経が優位な状態)へと導きます。
  • 全身のバランス調整
    首の痛みだからといって、首だけを見ることはありません。
    ち打ちの衝撃は、背骨、骨盤、さらには足首に至るまで、全身に歪みの連鎖を生み出します。
    この根本的な歪みの連鎖を断ち切らない限り、症状は再発します。全身を一つのユニットとして捉え、完璧なバランスを取り戻します。
  • 生活リズムの改善:質の良い睡眠、バランスの取れた食事、ストレスとの上手な付き合い方など、自律神経を整えるための具体的な生活習慣アドバイスを行います。
  • 積極的な運動:ウォーキングなどのリズミカルな有酸素運動は、自律神経を整えるのに非常に効果的です。体力の回復と気分のリフレッシュを図ります。

その

第4段階:維持期

(症状改善後)

~再発ゼロへ。未来の健康を作る

「卒業」と「メンテナンス」~

この時期の患者様の状態

  • 痛みや不調が完全に消失し、事故前の日常生活を何の問題もなく送れている。
  • 心身ともに健康で、再発への不安もない状態。

この時期の治療目的

おめでとうございます!ここが私たちの目指すゴール、治療からの「卒業」です。

そして、ただ元に戻すだけでなく、この良い状態を生涯にわたって維持し、将来的な不調を予防するための「未来の健康づくり」のスタートです。

  • 最終チェックと卒業
    全身の状態を最終確認し、歪みや神経の伝達に問題がないことを確認できれば、治療は卒業
    となります。
  • セルフケアの完全習得
    プロに頼らなくても、ご自身で最高のコンディションを維持できるよう、あなただけの「オーダーメイド・セルフケアプラン」を伝授します。これが私たちからの、一生モノのプレゼントです。
  • 任意でのメンテナンス通院
    ご希望の方には、月1回程度のメンテナンス通院をご提案しています。定期的なお身体のチェックと調整で、不調の小さな芽を早期に摘み取り、常に最高の状態をキープできます。
  • 油断しないこと:治ったからといって、猫背での長時間スマホなど、以前の悪い生活習慣に戻らないことが何よりも大切です。
  • 健康への意識:今回の経験を糧に、ご自身の身体と真摯に向き合う習慣を、ぜひこれからも続けていってください。

治療費・保険について

「治療費ってどれくらいかかるの?」

「お金の心配で治療をためらってしまう…」

そんな不安をお持ちの方も多いのではないでしょうか?

実は、交通事故の治療には患者さんの負担を軽減する制度がしっかりとあるんです。

安心して治療に専念していただけるよう、詳しくお伝えします。

自賠責保険での治療

交通事故でのむち打ち治療は、原則として自賠責保険が適用されます。

治療費0円(相手方保険会社が直接支払い)
慰謝料1日4,300円(2020年4月改定後)
交通費実費支給

保険会社との対応

  • 定期的な治療経過報告
  • 必要に応じた診断書の提出
  • 治療継続の医学的根拠の説明

後遺症を防ぐための重要ポイント

「後遺症が残ったらどうしよう…」

そんな不安を感じているあなた。
大丈夫です。

適切な対応をすることで、後遺症のリスクを大幅に減らすことができるんです。

今からでも遅くありません。

一緒に確認していきましょう。

よくあるご質問

実際に交通事故に遭われたお客さまさんから、よくいただく質問をまとめました。

事故直後に痛みがなくても治療は必要ですか?

はい、必要です。

むち打ち症状は事故から数日後に現れることが多いため、痛みがなくても医療機関での検査を受けることをお勧めします。

整形外科と整骨院、どちらに通うべきですか?

理想的には両方を併用することです。

整形外科で診断書を取得し、整骨院で日常的な治療を受けるという使い分けが効果的です。

治療はいつまで続けられますか?

医学的に治療の必要性がある限り継続できます。

ただし、保険会社から治療終了の打診がある場合は、医師や治療家と相談の上で判断します。

まとめ

交通事故に遭われた場合は、たとえその場で痛みや不調を感じなくても、医療機関での検査を受けることを強くお勧めします。

むち打ち症の多くは事故から数時間~数日後に症状が現れるため、「大丈夫だと思う」という自己判断は禁物です。

早期の検査により、目に見えない損傷や将来的なリスクを把握でき、適切な治療計画を立てることができます。

また、万が一後遺症が残った場合でも、事故直後の医学的記録があることで、適切な補償を受けられる可能性が高まります。

「今は痛くないから大丈夫」ではなく、「今は痛くないけれど、念のため検査を受けよう」という考え方で、あなたの健康と将来を守ってください。